はじめに
2025年4月から、「かかりつけ医機能報告制度」がスタートします。これまで「かかりつけ医」という言葉は広く知られながらも、制度としての明確な運用ルールは存在していませんでした。
しかし、今回の制度化により、「かかりつけ医」として名乗るためには、一定の要件を満たし、所定の報告を行う必要があります。
制度導入の背景:目指すのは“身近で頼れる医療”の明確化
厚生労働省はこれまでにも「かかりつけ医機能」の重要性を訴えてきましたが、制度として普及は進んでいませんでした。
その背景には、日本におけるフリーアクセスの医療制度、つまり患者が自由に専門医や病院にかかれる仕組みがあり、「まずはかかりつけ医へ相談する」という文化が根付きにくかった事情があります。
今回の報告制度は、そうした状況に対するひとつの対策です。クリニックが持つ医療機能を明示し、患者が“自分に合ったかかりつけ医”を選べるようにすることが目的です。
どんなことを報告するのか?
報告の対象は都道府県知事で、内容は以下のようなものが含まれます。
- 対応可能な疾患・診療内容
- 継続的な診療の可否
- 地域医療機関との連携体制
- 訪問診療や在宅医療の有無
特に重要なのが「どんな疾患を幅広く対応できるか」という点です。たとえば、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患、睡眠障害、視力低下、皮膚トラブルなど、日常的に生じる体調不良について、まず相談を受けられる体制が求められます。
専門医へダイレクトに行くのではなく、「まずはかかりつけ医へ」が基本となる流れを後押しする制度なのです。
病院との違い:クリニックにも“見える化”の波が来る
これまで病院は、機能報告の義務やPL(損益計算書)の提出を通じて、ある程度情報が公開されてきました。一方、クリニックについては、外部からその機能や強みが見えにくい状況にありました。
今回の制度により、クリニックも機能を「見える化」することが求められ、患者から“選ばれる”ための情報提供が重要になります。
院長が今から準備しておくべきこと
- 自院の診療対応範囲の棚卸し
どんな疾患・症状に対応できるのかを明文化しましょう。 - 地域連携の体制整備
専門医療機関や訪問看護との連携体制を確認・構築します。 - 職員への制度周知
制度の目的や内容をスタッフにも共有し、受付・問診レベルで患者対応が統一されるようにしましょう。 - 自治体からの最新情報の把握
報告様式やスケジュールの詳細について、都道府県からの通知に注意を払いましょう。 - IT化に対応する
医療DXの推進とともに、診療所運営における「IT化への対応力」がますます重要になってきています。
令和8年1月から「GMIS」による報告が開始されます
2025年(令和7年)時点では、介護保険施設等に対しての「医療情報・システム基盤整備体制充実加算(医療DX加算)」の届出や整備が求められていましたが、令和8年1月からは「病院・有床診療所」等においても、厚生労働省が運営するGMIS(医療情報・システム基盤整備状況報告システム)を通じた報告が義務化されます。
これにより、診療所においても
- オンライン資格確認の導入
- 電子カルテ導入の有無
- 電子処方箋への対応状況
などの情報をGMISを通じて報告する必要が出てきます。
対応が遅れると加算の算定に影響する可能性もあるため、早めの準備と体制整備が求められます。
まとめ
「かかりつけ医機能報告制度」は、これからの地域医療を支える重要な枠組みです。制度の導入を“義務”ととらえるのではなく、自院の強みを患者に伝えるチャンスと考え、今から準備を進めることが重要です。
“なんでも相談できる、安心の窓口”としての存在感を高めることが、これからのクリニック経営においてますます大切になっていきます。
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